冬(増ゆ)来たりなば春(張る)遠からじ?

 冬(増ゆ)来たりなば春(張る)遠からじ?

 

春夏秋冬、季節を表す言葉の語源を遡ると、いずれも諸説ありますが、どれも昔の人々の生活と精神の有様が影響を与えているようです。ここでは「冬の語源」について諸説ご紹介いたしましょう。

 

まず、寒々しい冬をそのまま表現したような「冷ゆ(ひゆ)」説。夏の語源を「暑(あつ)」からの転訛とする説に対応したもののようです。暖をとる手段に乏しい古代であれば、冬はなおさら「冷ゆ」です。

 

そんなに簡単では面白くない(?)という方にはこちら…。「冬(ふゆ)」を「振る(ふる)」と同源とする説をご紹介申し上げます。

 

白川静博士著『字訓』には、「振る」は「小さくふり動かす」ことで「ゆり動かすことによって、その生命力がめざめ、発揮されると考えられた」とあります。会議中に眠くなると、首を回したり頭を振ったりする人をよく見かけますが、これも眠りかけた魂(意識)を目覚めさせる、きわめて日本人的行為かもしれません。お祭りで担ぎ手が掛け声と共に神輿を上下に振っているのを見ますが、これもまた「振る」行為の一つでしょう。こういう儀式化された「振る」行為を「みたまふり」、そうして現れた神霊を「みたまのふゆ」といいます。冬の木枯らしに振り動かされ、増殖(増ゆ・殖ゆともに「ふゆ」と読む)された自然界の「みたまのふゆ」が、やがて草木の種や花の蕾をパンパンに張らせる姿こそ「はる(春)」なのです。

 

「冬来たりなば、春遠からじ」

 

自然の厳しさを恵みと考える日本人のたくましい精神力こそ、「ふゆ」の源と言えるでしょう。

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