平成27年度教化研修会報告
去る9月9・10日の両日、三峯神社を会場に県内神職51名の参加を頂き、教化研修会を開催しました。
教化研修部では、『地域づくり』をテーマとして、実際の「まちづくり」に携わっている先生を講師にお招きして、地域活性化に向けた「まちづくりから人づくり」への基となる提案方法や考え方を伺い、併せて我々が取り組んできた『お宮と親子のつどい』について、この事業の主眼を再確認しながら、神社を主体とした地域づくりや地域活性の在り方を参加者と一緒に考えてみようと、今回の研修主題を『神社を要とする地域づくり』副題に「やわらかアタマで人づくり」としました。
講師には、饗庭(あいば)伸(しん)首都大学東京都市環境科学研究科都市システム科学域准教授、髙橋寛司埼玉県神社庁学芸員をお招きしました。
先ず初めに、饗庭先生に『「まちづくり」と「神社づくり」』と題したご講演を頂きました。
日本は2004年をピークに「人口減少時代」へと入っており、その原因として、戦後三年間のベビーブームにあるとされました。人口減少と高齢化社会自体は悪いことではなく、むしろ治安の悪化や路頭に迷う人が増えてしまうことの方が悪いことであり、素晴らしい都市の縮小を目指すことが大事であると述べられ、これからの都市計画、地域計画に何が課題であるか、次の3点を挙げました。
1.高齢者のための空間を大急ぎでつくる
2.これから生きていく世代のための暮らしと仕事の空間をつくる
3.都市をたたむ、縮小する
そのために、これからの神社という空間はどう使えるのかについて、神社は歴史的に様々な活動を吸収し、生み出しをする、神聖な空間と考えられるので、アイディア次第では、地域との密着性も深まるまちづくりが出来るのではとの御意見を伺いました。参考として実際に携われた建築の世界で行われている例やお寺での境内の使われ方を紹介して頂きました。
まちづくりとは、街の中に存在する他人の土地であっても、みんなのためになるような提案をして実現することで、それが都市計画に繋がる。勝手に提案する事も大事で、ワークショップを使ってフラットに議論し、アイディアを出せば考えが良くなり、結論が出る。集合的決定をしながら、個人の決定をしていけばバランスも良くなり、頭の中も働くので個人の決定はとても良いことであると述べられました。
講演後の班別討議では、9班に編成し、「まちづくりデザインゲーム」を行いました。
このゲームは、架空神社のある街の地図をもとに、実際にまちづくり体験が出来るゲームで、各班員が、子供、主婦、サラリーマン、大学生、外国人、高齢者の設定になりきってもらいます。写真(夢の原型)やカード(資源)を使い、理想の神社となるイメージを提案し合う。良い提案に対して、賛同者からコイン(お金)を多く集めた人が勝利となるゲームです。班によって考える時間の差はありますが、ゲームとしては分かりやすい内容で一人ひとりが考えなくてはいけないため、積極的に楽しく取り組んでいました。
神職という立場でなく、様々な地域に住む人の目線や思いになって、神社を捉え直してみるということは新鮮であり、地域づくりや神社づくりには、独り善がりにならないよう周囲に心を配ることの大切さも学べたように思えました。
ゲーム後の饗庭先生からの説明で設定や資源には意味があり、写真のイメージを共有して決断を早くするという意味合いもこのゲームにはあると述べられました。
「まちづくりデザインゲームの」結果内容についてはここから(395KB)
続いて、髙橋先生に『「神社づくり」のための「お宮と親子のつどい」とは』と題したご講演を頂きました。
初めに「お宮と親子のつどい」開催の経緯と県内各支部の現在の状況を述べられ、次の段階として各社ごとの単独開催を勧めるべきとされ、神社づくりの参考例を紹介して頂きました。また、近世においても江戸や岩槻・川越の城下町や忍藩領となった秩父において、まちづくりや地域振興に神社の祭礼が活用された例が紹介されました。
さらに、新しく住宅団地に住む人たちが望むコミュニティについても述べられ、地域住民のコミュニケーションを図る方法として、フランス発祥の「住人祭」という近隣住民の交流の仕方や、行政として京都市が取り組む「地蔵盆」のすすめを事例に挙げ、こうした手法に学んで、新住民にも積極的に神社のスペースを開放し、お互いの顔や名前を覚えながら、ゆっくりと時間をかけて神社側の「世間」に入ってきてもらうようにしていくことが今後必要である、と述べられました。
最後に、神社づくりのためには神職として神社やその土地、人々の関係を歴史に沿って分かりやすく説明出来るようにすること、氏子がいての神社であるということを理解して、地域、本人、後継者のためにも自身の奉務神社を調べていくことが肝心であると、述べられました。
今回の研修会での講演、班別討議により、神職として「地域づくり」をしていくには、副題の通り「やわらかアタマ」を持ち、様々な人の立場になって考えて提案をしていき、氏子の方々とお互いに地域の活性化を図っていくことが大事だと深く感じました。